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Last updated : 15th October. 2022
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時間可逆とは時間を反転すると元の状態に戻ることです。ミクロな物理法則(ニュートンの第2法則など)ではこの可逆性が成り立ちますが、マクロ現象(煙の拡散など)ではこの可逆性が経験的に成り立ちません。時間可逆なミクロな基礎物理法則(ニュートンの第二法則etc.)から、なぜ、我々が良く知っているマクロな不可逆現象(煙の拡散,熱の伝導etc.)が起こるのでしょうか?実は、熱力学の第二法則(エントロピー増大の法則)に代表される不可逆性の問題は、ミクロな物理法則の視点からみると、現在も未解決なのです。例えば、熱力学の第二法則のために、マクロ現象の不可逆性の一例である”膨張衝撃波”は、気体などの流体中では存在できないと一般に信じられています。本研究では、ミクロな物理法則の視点から、膨張衝撃波が存在できないことを明らかにするために、天体現象に見られる超新星爆発を対象に、時間可逆なN体解析手法を用いて、その時間反転解析を行い、膨張衝撃波のメカニズムを調べています。
上図は爆発によって生成された衝撃波です。図中では、各粒子の位置を点として表しています。天体現象の超新星爆発と同様に、”圧縮衝撃波”に相当する高密度の領域が、中心から外側へと矢印の方向に伝播していきます。ここで、一斉に全ての粒子の速度を反転すると、時間可逆なミクロな物理法則(ニュートンの第二法則etc.)に基づいて、衝撃波は中心方向に向かって”膨張衝撃波”として伝播していくはずです。自然は、このような物理過程をお許しになるのでしょうか?
本研究は、安部隆士 教授(東京大,ISAS/JAXA)と行っています。
[References]
[1] N. Komatsu, T. Abe, Physica D, 195, pp.391-397(2004).
[2] N. Komatsu, T. Abe, Comput. Phys. Comm., Vol. 171, pp.187-196 (2005).
[3] N. Komatsu, T. Abe, Phys. Rev. E, 72, 021601, pp.1-9 (2005).
[4] N. Komatsu, T. Abe, Expansion shock waves in the implosion process from a time-reversible molecular-dynamics simulation of a dual explosion process, submitted to Phys. of Fluids.