2006年度北陸数論小研究集会

下記の通り、小研究集会を開催いたします。
今回の主な目的は、Kummer全集の中の(代数的整数論に関する)いくつかの論文を紹介してもらうことと、その後の進展について解説していただくことです。

世話人   平林幹人      (金沢工業大学)
菅野孝史 (金沢大学)
山下浩 (金沢学院大学)
野村明人 (金沢大学)
木村巌 (富山大学)
日時 : 平成18年12月26日、27日
会場 いしかわシティカレッジ 教室2
    金沢市広坂2丁目1-1
URL:http://www.ucon-i.jp/contents/city_college.html
昨年までの会場とは違いますのでご注意ください


講演プログラム(時間等は変更の可能性もあります)

12月26日
9:45~10:45   片山孝次 ヘンゼルの講演を通してみたクンマー
(概要) クンマーの人となり、リーグニッツ時代、ブレスラウ時代、ベルリン時代と晩年にわけて彼の業績(理想数の導入、円分体の類数、フェルマ問題など)を眺める。その他、ディリクレ、クロネッカー、ワイエルシュトラス、ヤコービとの交友など。
11:00~12:20   吉野健一 1の巾根と整数からなる複素数の理論について---全集[39],[40a]
(概要) [39]は 1851年以前のKummer の数論研究報告集というべき内容を持つ。勿論、その後の研究は一切含まれない。さらに、それ以前の研究でも少なくとも冪剰余の相互法則の研究と3次剰余の理論での自身の予想関連の研究は含まれていない。複素単数の理論から始まり、イデアル素因子、複素イデアル数の概念などを定義し、現在のイデアル類群を考え、その類数を第1因子と第2因子の積として捉えて、それらの延長上に応用として、非正則素数のベルヌイ数による特徴づけ、べき指数が正則素数のときのフェルマーの最終定理の証明など一連の結果が導かれている。また、[40a]はその証明手法に問題があることで有名だが、時間が許せばこれも簡単に紹介する。
13:40~15:00   橋本喜一朗 ガウス周期の一般化による巡回多項式族の構成と応用
(概要)
p=1 (mod m) なる素数に対して、1 の p 乗根 \zeta_p の共役を
Q(\zeta_p) のガロア群の指数 m の部分群の各剰余類上で加えた m 個の数を「ガウス周期」という.。これらが満たす 1 次, 2 次の関係式を定義方程式とする代数多様体の解から巡回多項式が得られる.。そのメカニズムと実例について話す.。少し異なる観点から同じ研究が F.Thaine によって組織的になされている.。その内容についても紹介する.。
15:20~16:20   角皆宏 Noetherの問題のMapleによる計算
(概要) 有理関数体上に与えられた有限群の作用に対する(一般)Noether問題が肯定的であることを、具体的に生成元を見出すことによって示すことは、結局、多変数多項式系からの変数の消去に帰着するので、或る程度以上の計算になると、計算機上でGr\"obner基底の方法(広中-Buchbergerのalgorithm)を実行するのが最有力である。多くの計算機代数ソフトウェアに実装されているが、本口演では、演者が普段良く用いている Maple を使った計算の実際を紹介する。時には、実装されている出来合いの関数を用いるだけでなく、簡単な programming をする方が効率が良いこともあるので、
その際のヒントも紹介したい。
(本集会の主題であるKummerの論文からは少し離れますので、気楽に聴いて頂ければと思いますが、計算機代数ソフトウェアの有効な利用法についての意見交換を誘発できれば良いな、と考えています。)
16;35~17:35   木田雅成 羃根を含まない体のクンマー理論について
(概要) 古典的なクンマー理論を乗法群に関するクンマー理論だと思うと、乗法群を可換代数群におきかえたクンマー理論に一般化できる可能性がある。そして、うまく代数群と基礎体を選ぶと羃根を含まない体のクンマー理論ができる。小松亨、小川裕之両氏によって始められたこの理論と、その応用についてお話をします。
    18:20~   懇親会 場所未定
12月27日
9:45~11:05   中島匠一 いわゆる Stickelberger の定理の素数分体の場合の証明など(Kummer の論文[40][42]の紹介)
(概要) 現在 Stickelberger の定理と呼ばれている主張は素数分体の場合に Kummer が証明していて、Stickelberger はそれを合成数の場合に一般化したのである。本講演ではこの定理の証明を中心に論文[40][42]を紹介する。もちろん、論文で扱われている他のテーマ(相互法則、対数微分、p進対数など)についても触れる予定である。
11:20~12:20   都地崇恵 Colemanべき級数について
(概要) p進体に1のpべき乗根を付け加えた体における単数群のノルムよる逆極限はべき級数で捉えることができる.。さらにそれは円単数とp進L関数との関係を与える。 これらについてより一般の設定で解説する.。
13:40~15:00   大西良博 Kummer congruences on trigonometric and elliptic Gauss sums
(概要) 古典的な Gauss 和の指数函数を三角函数や虚数乗法を持つ楕円函数などの周期函数に置き換へた和は, 最近, 浅井哲也氏によつて再発見され詳しく調べられ始めてゐる. これは Hecke の L 函数の特殊値を与へる自然なものである.
この講演では, その値がもとの三角函数や楕円函数の羃級数展開の係数から簡明な合同式で計算できることを説明したい. そのひとつの応用例として, Cauchy の合同式
「素数 p が p≡3 mod 4 のとき, Q(\sqrt{-p}) の類数は$-2\frac14B_{(p+1)/2}$ の mod p での最小剰余である」
の別証や, これの類似の
「素数 p が p≡1 mod 4 のとき, Q(\sqrt{-p}) の類数は $\frac12(-1)^{(p-1)/4}E_{(p-1)/2}$ の mod p での最小剰余である」
といふ言明が証明される. ここに B_n は Bernoulli 数で E_n は Euler 数である. これは Bernoulli 数と指標付き Bernoulli 数との Kummer の合同式と捉へられる.
15:20~16:40   吉野健一 Kummer の class number parity およびclass number divisibility の判定法について
(概要) Kummerの数論研究の最後を飾る[79]と[80]の内容のうち、[80]を主に詳細に紹介する。この論文は素数導手の円分体の第2因子が偶数である条件は何かから始まり,次にそれが p 以外の奇素数を因子として持つための条件を調べたもので,最近のR. Schoof の p 円分体の第2因子の論文の百年以上前にこの分野を独自の手法で開拓した重要な論文であるが、その知名度は比較的低く、ここではその意味を込めて、それを紹介することにしたい。[79]はその内容を簡単に触れる程度にする。


懇親会について

12月26日講演終了後に懇親会を行いたいと考えています。予約の都合もありますので、参加希望の方は(できるだけ早めに)野村 anomura@t.kanazawa-u.ac.jp (@は小文字にしてください)までご連絡ください。後で変更も可能ですので、とりあえずの予定をお知らせいただければ幸いです。

金沢駅から会場まで
金沢駅から「香林坊経由」のバスに乗り、「香林坊」で下車してください。ただ、香林坊のバス停は複数あります。北鉄バスのHP内の香林坊
       http://www.hokutetsu.co.jp/htd_hp/index/korinbo.html
でご確認ください。金沢駅からバスに乗ると 上記サイト内の①②④番バス停のいずれかに停車します。①番バス停正面に赤レンガ色の建物(近代文学館:旧第四高等学校)の建物があります。この建物を左手に見て進むと細い道路があり、渡ると左手にレンガの建物が2つ見えます。真ん中左手奥の建物が会場です。会場の外観は
       http://www.ucon-i.jp/contents/city_college.html
で確認できます。