北陸数論セミナー 過去の記録(平成19年度)

第75回 (平成20年 2月14日 16:00〜)
講演 1 中島匠一氏(学習院大学理)、萩原賢紀氏(学習院大学理 M2)
     楕円曲線のFp有理点の群構造の分布
概要 有理数体上の楕円曲線 E と E の good prime pに対して、E の Fp 有理点の群 E(Fp) は (Z/n1Z) x (Z/n2 Z) と表せる(n1 は n2 の約数; Fp は p 元体)。
我々は楕円曲線 E を固定して素数 p を動かして (n1, n2) の分布を調べる問題を考察した。特に、E がCM型の楕円曲線 y^2 = x^3 + b x である場合に詳しい数値実験をおこない、いくつかの結果と予想を得たので、それについて報告する。
講演2 小松亨氏(上智大学理工)
     生成的多項式を用いた素数次巡回体の構成について
概要 Cohen-Nakanoの$Q$上定義された素数次巡回多項式を用いて素数次巡回体の定義方程式を具体的に求める方法について述べる。特に、与えられた導手を持つ巡回体を実現するための特殊化を求めるアルゴリズムについてお話しする。
また、時間があれば導手の大きさと特殊化の大きさの関係についても触れる。

第74回 (平成19年11月29日 18:15〜 )
講 演 江上繁樹氏 (富山大学)
      多重ゼータ関数と相互法則
概 要  

第73回 (平成19年11月15日 18:15〜 )
講 演 吉野 健一氏 (金沢医科大学)
       実 $p^r$ 円分体の類数の素因子の多項式による特徴づけ
          (小山陽一氏との共同研究)
概 要    実 $p^r$ 円分体の類数の素因子を見つけるアルゴリズムを紹介し、具体例を幾つか示す。手法はKummerが提案した方法に依拠している。彼の手法を延長して素数 $\ell$ が実円分体 $Q(\zeta_{p^r})^{+}$ の類数$h^{+}_{p^r}$ を割るかどうかを判定する必要十分条件にまでにできるという定理を示す。素数 $\ell$ を任意に与えるとき、$p$ と $\ell$ のみで有限体 $Z/\ell Z$ 係数のある固有な多項式 f(x)が定義でき、その多項式の既約因子を調べることで、上記の定理の証明ができる。

第72回 (平成19年11月1日 18:15〜 )
講 演 山田 美枝子氏 (金沢大学理学部)
       標数2^tのガロア環のガウス和
概 要 標数2^tのガロア環上に、ある条件のもとで差集合が存在するための必要十分条件は、この環のガウス和で与えられる。このガウス和について成り立つ関係式と、いくつかの場合について具体的な値を与える。

第71回 (平成19年10月18日 18:15〜 )
講 演 若槻 聡氏 (金沢大学理学部)
       2次のジーゲルカスプ形式の空間上のヘッケ作用素の明示的跡公式について
概 要 2次のジーゲルカスプ形式の空間上のヘッケ作用素の跡に、ある明示的公式を与える。この公式は跡の具体的な数値を得るための一つのステップとなっている。
この講演では、一変数の場合の公式を復習してから、2次のジーゲルカスプ形式の場合を解説します。

第70回(平成19年10月4日 18:15〜)
講  演 木村 巌氏 (富山大学理学部)
       governing field の紹介
概  要 虚二次体K=Q(\sqrt{-4})のpひねり(pは素数)の族{K_p=Q(\sqrt{-4p})}を考える。
  K_pの類数が2で割り切れる   ←→p = 1 mod 4←→pはQ(\sqrt{-1})で分解
  K_pの類数が2^2で割り切れる←→p = 1 mod 8←→pは8分体Q(\zeta_8)で完全分解
  K_pの類数が2^3で割り切れる←→p=x^2+32y^2 (∃x, y)
                                       ←→pはQ(\zeta_8, \sqrt{1+\sqrt{2}})で完全分解
といったことが知られている。各行の最後の条件から、pがそれぞれ自然密度を持つことがわかる。
governing fieldとは、上の状況を一般化して考えられる、次のような代数体Ω(d,j)をいう:
二次体K=Q(\sqrt{d})に対して、そのpひねりの族 {K_p=Q(\sqrt{dp})|pは素数}をとる。このとき、ある代数体Ω(d,j)が存在して、
                    K_pの類数が2^jで割り切れる←→pがΩ(d,j)で完全分解。
governing fieldの存在については、d,jの組み合わせで、既知のもの、予想されているもの、に分かれる。年末の北陸数論研究集会で詳細に触れる前に、概要についてお話したい。
(参考:H. Cohn, J. C. Lagarias, Math. Comp., vol. 41, 1983, pp. 711--730,
         山本芳彦、数学、vol. 40(2), 1988, pp. 71--78)

第69回(平成19年7月19日 18:15〜)
講  演 山下 浩 氏 (金沢大学教育学部)
     ブロックによる相対類数公式の細分化
概  要 奇素数 p が分岐しない虚アーベル体の相対類群のp部分をp進整数環を係数とするガロア群環上の加群と考える。このとき,群環のプロックべき等元 b で相対類群を分解したときの類数公式について,ガロア群での p に関するフロベニウス写像の b への作用が自明でないときと自明なときとについてその証明を紹介する。

第68回(平成19年7月5日 18:15〜)
講  演 1 野村明人 氏 (金沢大学工学部)
     3次巡回体の類体塔と類数に関する簡単な注意
概  要 4個以上のprimeが分岐する3次巡回体は、そのヒルベルト3類体の類数が3で割り切れることが知られている。本講演では、3個のprimeが分岐する3次巡回体の場合の簡単な注意を与える。また、pとq が分岐する2つの3次巡回体をF_1、F_2とするとき、一方の類数が27で割り切れれば他方の類数も27で割り切れることが内藤氏によって示されていた。ここでは、81での可除性について数値例を紹介する。
講  演 2 木村巌 氏(富山大学理学部)
      Pari-GPによる3次巡回体の類数の計算について
概  要  講演1を受けて、実例計算のデモンストレーションを行う.特に、p, q分岐の3次巡回体で、類数が3べきで割り切れるものが、Pari-GPの簡単なスクリプトで列挙できることを見る.

第67回(平成19年6月21日 18:15〜)
講  演 塩見大輔 氏 (名古屋大学 多元数理研究科 D1)
     実アーベル体のMaillet行列式
概  要 本講演では、Clausen関数と呼ばれるベルヌーイ多項式と深い関係にある関数を用いて、実アーベル体の類数を行列式を用いて表す。また、この行列式の応用として、conductorが素数ベキであるような虚アーベル体に対して、類数を与える行列式について述べる。

第66回(平成19年6月7日 17:30 〜 19:30)
講  演 谷口隆氏(東大数理)
     2元3次形式のゼータ関数と,大野-中川関係式の一般化
概  要 G=GL(2)が2元3次形式の空間Vに作用する表現を考える.表現(G,V)は,整軌道が3次環を分類するため,3次体の整数論において基本的な対象である.一方でこの空間は,概均質ベクトル空間の非自明な例であり,付随するゼータ関数たちが珍しい解析的性質を持っていることが,新谷卓郎氏の詳細な研究により明らかになっていた.
大野-中川関係式とは,このゼータ関数たちの間に見つかっていた関係式で,3次拡大の言葉では,総実3次体と虚3次体の間の一定の対応を与えるものである.最近,大野泰生氏,若槻聡氏との共同研究により,この関係式を別の不変格子に対し調べ,一定の関係式を発見した.今回は,これまでの理論の概説と,得られた関係式についての報告を行いたい.

第65回(平成19年5月24日 18:15〜)
講  演 河村尚明氏(北海道大学大学院 理学研究科 D3)
     Ikeda's conjecture on the period of the Ikeda lifting and related topics
        (joint work with Professor H. Katsurada)
概  要 Let $n$ and $k$ be positive even integers satisfying that $k > n+1$. Then we could consider the so-called Ikeda lifting of elliptic cusp forms of weight $2k-n$ to Siegel cusp forms of degree $n$ and weight $k$, which is a generalization of the Saito-Kurokawa lifting. Professor T. Ikeda gave a conjecture on the period of the lifting. In this talk, I would like to explain our strategy for proving this conjecture and to report recent progresses, in particular, in the case $n=4$.
Furthermore, as a related topic, we would also like to talk about congruences between Ikeda lifts and non-Ikeda lifts.

第64回(平成19年5月10日 18:15〜)
講  演 平林幹人氏(金沢工業大学)
     Newman の公式の一般化
概  要 1970 年 M. Newman は p 分体(p:奇素数)の相対類数を行列式で表し、それを用いてp < 200 について計算した.その結果Kummer の表で p = 103,139, 163 に誤りがあることを見つけた.1981 年 L. Skula は、上記の公式を p べき分体に拡張し,岩澤の公式の別証明を与えた.
 本講演では、これらの公式を任意の虚アーベル体に拡張する.これから,Newman,Skula が決めてなかった符号が決まる.

第63回(平成19年4月26日 18:15〜)
講  演 成田宏秋氏(大阪市立大学)
     Fourier expansion of Arakawa lifting
         (村瀬篤氏との共同研究)
概  要 楕円尖点形式及び定符号四元数環上の保型形式の組と、メタプレクティック表現から作られるあるテータ級数との合成積(テータリフト)により、符号(1+,1-)の四元数ユニタリー群Sp(1,1)上の保型形式で「無限素点で四元数離散系列表現を生成する」という表現論的特徴付けを持つものが構成できる(荒川リフトと呼ぶ)。
 この講演では、荒川リフトのフーリエ係数を、リフトされる楕円尖点形式と四元数環上の保型形式の「トーラス積分」の観点から具体的に表示する。このトーラス積分はその2乗ノルムが保型L関数の特殊値と関連することが知られている重要な数論的不変量である。