北陸数論セミナー 過去の記録(平成20年度)

第89回 (平成21年 2月12日 18:15〜)
講演 1 黒崎 麻衣氏(学習院大学大学院:M2)
    楕円曲線の等分多項式の係数について
概要 標数が2でない体上の楕円曲線の一般形 y^2=x^3+a_2x^2+a_4x+a_6 について、等分多項式を計算するプログラムを作成(数式処理ソフトMapleを利用)し、係数について考察した。その結果、いくつかの係数の一般形と多項式のcontentが求まったので、それについて報告する。
講演2 駿河 大輔氏(学習院大学大学院:M2)
     F_p上の楕円曲線とそのtwistの群構造について
概要 素数 p に対して、F_p上の楕円曲線 E とその2次twist E' を考える。数式処理ソフトMapleで F_p 有理点のなす群 E(F_p) と E'(F_p) の群構造を求めるプログラムを作成した。このプログラムによって両者の群構造を比較するデータを集めたので、データから得られたいくつかの観察結果について報告する。


第88回 (平成20年 12月4日 18:15〜)
講演 林 彬氏(金沢工業大学)
   Brigitte Vall\'{e}e の論文「Gauss' Algorithm Revisited, Journal of Algorithms(1991)」の紹介  
概要 論文の概要:
2次元整数格子基底縮小問題は,ガウスの多項式時間アルゴリズムによって完全に解かれている.ある基底により記述される格子 L が与えられるとき,ガウスのアルゴリズムは L の2つの逐次最小から成る基底 (u,v) を出力する:u は L の最短非零ベクトルであり,v は u に線形独立な L のすべてのベクトルの中で最短のベクトルである.ガウスのアルゴリズムは格子と2次形式の簡約理論にとって基本的である.
ガウスのアルゴリズムの多項式時間計算量は,1980年Lagariasによって確立されていたが,しかしいくつかの自然な問題が未解決のままである.
この論文の主結果は次の通りである:
(A)そのようなアルゴリズムの反復回数の可能な最良の上界を与える.
(B)ガウスのアルゴリズムがユークリッドのcenteredアルゴリズムを2次元の場合に一般化することは,直観的である.ここで2つのアルゴリズムの間のつながりを明確に確立し,ガウスのアルゴリズムの最悪入力configurationが,1846年Dupr\'{e}が最初に示したcenteredユークリッドアルゴリズムの最悪入力configを一般化することを導く.

第87回 (平成20年 11月20日 18:15〜)
講演 西来路文朗氏(広島国際大学)
   虚数乗法を持つQ曲線の形式群について
概要   Q上定義された楕円曲線から定義される2つの形式群:極小モデルの形式群、L関数の形式群、はともにZ上定義され、Z上強同型であることが、本田平氏により示されている。この結果は、Deninger-NartによりGL_2-typeのアーベル多様体に対し一般化され、講演者によりQのアーベル拡大体上定義されたQ曲線や、ビルディングブロックに対し、一般化されている。
  本講演では、中村哲男氏により分類された虚数乗法を持つQ曲線に対し、本田氏の結果を一般化する。Q曲線の定義体がQのアーベル拡大体とは限らない点がこれまでの一般化と異なる点である。

第86回 (平成20年 11月6日 18:15〜)
講演 岡野恵司氏(早稲田大学基幹理工学部)
   円分的 Zp-拡大の p-拡大の最大不分岐 p-拡大がクラス1となる条件について
概要 p を奇素数として,代数体の円分的 Zp-拡大を考え,その最大不分岐 p-拡大がクラス1(即ち可換拡大)となる条件を考察します.
内容としては,「クラス1の最大不分岐 p-拡大となる必要条件を与えること」,「Galois 群が十分大きいクラス1の最大不分岐 p-拡大の構成の試みと,幾つかの円分的 Zp-拡大の p-拡大について,これらがクラス1の最大不分岐 p-拡大をもつ必要十分条件」を話す予定です.

第85回 (平成20年 10月16日 18:15〜)
講演 平林幹人氏(金沢工業大学)
   Hasse 「アーベル体の類数について」の紹介V
概要  第1回で、アーベル体の類数公式を紹介し、第2回で、実アーベル体の類数を単数群において円単数のなす部分群の指数で表現することを紹介した。
今回は虚アーベル体の相対類数が整数であることの類体論による証明と単数指数 (Hasse index) のいろいろな性質、特に値の判定法の紹介を行う。

第84回 (平成20年 10月2日 18:15〜)
講演 野村 明人氏(金沢大学理工研究域)
   分岐を制限した代数体の埋め込み問題とその応用
概要   代数体の埋め込み問題の基本的な事を復習した後で、2つのトピックについてお話しする予定です。p が奇素数の時、与えられた p 群 G に対して有理数体 Q 上の G-拡大が存在することは、Scholz-Reichardtによって証明されています。1つめのトピックは Q 上の G-拡大において分岐する素点の個数をどのくらい少なくできるか?というものです。2つめのトピックは、不分岐 G-拡大 L/kをもつような k の構成についてです。
  今回の話は、9月に開催された「ガロア理論とその周辺 徳島 2008」でお話しした内容とほぼ同じです。

第83回 (平成20年 7月31日 18:15〜)
講演 平林 幹人氏(金沢工業大学)
        Hasse 「アーベル体の類数について」の紹介U
概要  前回は、第1章の要点、アーベル体の類数公式を導くことを紹介した。
 今回は、第2章の要点を紹介する。第1章で求めた実アーベル体の類数公式を2つの方法で変形する。第一の変形は考察する体 K 自身の円単数で類数公式を与える。この公式の応用として、Weberの結果を拡張する。第二の変形は、考察する体 K のすべての巡回部分体の円単数で K の類数公式を与える。
 次回から第3章、虚アーベル体の相対類数に入る予定である。

第82回 (平成20年 7月17日 18:15〜)
講演 阿部幸隆氏(富山大学理学部)
       虚数乗法をもつ準アーベル多様体について 
概要 総実体の総虚2次拡大とは限らない一般の代数体と虚数乗法をもつ準アーベル多様体
の関係について考察する.

第81回 (平成20年 7月3日 18:15〜)
講演 木村巌氏(富山大学理学部)
        Sageの紹介
概要 Sageは,W. Stein氏を中心に開発が進められている,数値解析・数式処理用のソフトウエアです.Pari/gp, GAP, Singular, Maxima, KASHなどを統合するフリーソフトで,Linux,Apple MacOS X, Microsoft Windowsなどの上で稼働します.特に数論の研究に用いるツールとして,どのようなことが出来るかをご紹介します.

第80回 (平成20年 6月19日 18:15〜)
講演 平林幹人氏(金沢工業大学)
    Hasse 「アーベル体の類数について」の紹介T
概要 1952年、Hasse は "\"{U}ber die Klassenzahl abelscher Zahlk\"{o}rper"を著した。そこで、有理数体上有限次のアーベル体の類数を、その最大実部分体の類数 h_0 と相対類数 h^* の積に分解し、h_0 を単数群の部分群の指数で、h^*を単数指数 Q と Beitr\"{a}ge の積で表した。さらに、導手 100 までの体の Q と h^* を求め、それらの表を作った。
この後2回ほど続ける予定の講演で、この Hasse の著書の内容を紹介する。今回は第1章(一般類数公式)を紹介するが、時間があれば、第2章(実アーベル体の類数の算術的構造)に入る予定である。

第79回 (平成20年 6月5日 18:15〜)
講演 塩見大輔氏(名古屋大学 D2)
    円分関数体の合同ゼータ関数の行列式表示について  
概要 1997年にRosen氏が$M$が既約モニック多項式のケースで$M$-円分関数体の類数のマイナスパートの行列式表示を与えた.。この結果は, Bae氏とKang氏によって任意の円分関数体の類数のプラスパート, マイナスパートのケースに拡張された。
本講演では, Bae氏とKang氏の結果のプラスパートのケースを合同ゼータ関数の立場から一般化したい。

第78回 (平成20年 5月22日 18:15〜)
講演 朝田衛氏(京都工芸繊維大学)
       1の素数乗根全体で生成される体のアーベル拡大体のガロア群について
概要 有限次代数体 k_0 に 1 の素数乗根をすべて添加した体を k_1 とします。k_0 の有限素点 v(剰余標数 p)を1つ固定し、その k_1 での惰性体、分解体をそれぞれ F, F_D,拡大体 F/F_D のガロア群を G とします。
G は,F 上の種々のアーベル拡大体のガロア群に作用しますが,特に,M を p の外で不分岐な F の最大アーベル pro-p 拡大体とするとき, G-加群 Gal(M/F) の性質(射影性など)について,お話します。

第77回 (平成20年 5月8日 18:15〜)
講演1 野村明人(金沢大工学部)
       (2,2)型虚アーベル体の類体塔について
概要 奇素数 p に対して,(2,2)型虚アーベル体 K のp類体塔の長さが1より大きくなるための条件について考察する.これまでに知られている結果を復習し,その簡単な応用について述べる.
講演2 山下浩(金沢大学教育学部)
       ブラウアーの類数関係についての紹介
概要  黒田の類数関係でガロア群が(2,2)型初等アーベル群の場合には,Lemmermyerの類体論のgenus theoryを用いた(代数的)証明が与えられている(F.Lemmermyer; Kuroda's class number formula).最後の§で奇素数pの場合には,Walter's formularの紹介がされている.
これは,ガロア群の誘導指標の関係式から得られるゼータ関数の関係式を仲介して部分体の類数の class numberrelations を導く方法で,ブラウアーの関係式と黒田の関係式の一般化である(D.Walter; Acta Arith. XXXV(1979),33-40,41-51).これらの結果のうち,Brauer'sclass number relation を主に紹介・検討します.

第76回 (平成20年4月24日 18:15〜 )
講 演 若槻 聡氏 (金沢大学理学部)
       Sp(2,R)の大きな離散系列表現に関する重複度公式について
概 要 レベルNの主合同部分群$\Gamma(N)$に関する$L^2(\Gamma(N)\backslash Sp(2,R))$上の離散系列表現の重複度公式について解説する.
Sp(2,R)は2種類の離散系列表現をもち, 一つは正則(反正則)離散系列表現, もう一つは大きな離散系列表現と呼ばれる. 正則離散系列表現の重複度は, すでに知られている正則なジ−ゲルカスプ形式の空間の次元である.
今回, ヘッケ作用素の跡に関するアーサーのclosed formula, $\Gamma(1)$-共役類の分類と我々の従来の次元公式から、大きな離散系列表現の重複度公式を得ることができたので、そのことについて報告する. 応用として, 正則離散系列表現の重複度と比較することにより, $\Gamma(1)$の正則ジ−ゲルカスプ形式のL-packetに関する予想が得られる.